「2016リオ五輪」よりも、「2016リオ五輪 以後」が気になってしまう…
前回の「旅の日記」に綴ったとおり、ブラジルはリオデジャネイロに到着した私たち。
この街の一部は、「リオデジャネイロ : 山と海との間のカリオカの景観群」として、2012年に登録されたユネスコの世界文化遺産です。
いわゆる“街並み”を対象としたものではなく、都市周辺の人々の手が加わって発達した“文化的景観”を対象とした世界遺産ということで、随分とざっくりとした括りだなぁと思っていたのですが、なるほど、実際に景色を眺めてみると納得なのであります。
*コルコバードの丘/Morro do Corcovado
リオデジャネイロのシンボルといえば、この像。海抜709mの「コルコバードの丘」の絶壁の頂に、高さ30m・重さ1,145tのキリスト像が立っています。
そして、そのキリスト像の足下から臨む景色がコチラ。(ちなみに写真のとおり、丘の上の混雑ぶりは半端じゃございません)
特徴的な海岸線と山々はそのままに、入り組んだ敷地に林立するビル群を眺めていると、“都市周辺の人々の手が加わって発達した文化的景観”という説明も、なるほど確かに納得感があります。
*コパカバーナ海岸/Praia de Copacabana
リオデジャネイロの中で最も有名な海岸であることはもちろん、世界的にその名が知られる「コパカバーナ海岸」。大西洋に面して、全長約3㎞続いています。
サッカーW杯などで、熱狂的なブラジル代表サポーターの様子がよくTVに映されますが、その場所がまさにこの海岸。写真のとおり、サッカーの試合がなくても常に人だらけ!
*カリオカ水道橋/Carioca Aqueduct
セントロ(旧市街)の風物詩、1750年に造られた水道橋。
かつての宗主国であるポルトガルはリスボンの「自由の水・水道橋/Aqueduto das Águas Livres」を模して建設されたもので、全長270m・高さ17.6m。かつて水道だったところは、今では路面電車が走っています。
・・・そのほかリオデジャネイロでは、教会や修道院も非常に印象的でした。
これまで訪ねてきたペルーやボリビアなどとは違って、荘厳というよりも、どこか自由な雰囲気が漂っているのは、やはりお国柄?
*カテドラル・メトロポリターナ/Catedral Metoropolitana
ピラミッドのような円錐形の教会。これだけ攻めたデザインということは、さぞかし新しいモノなのでしょうと思っていたけど、建造は1976年。たしかに現代建築ではあるけど、とはいえ40年前にこの教会を造ってしまうあたりは、さすがブラジル。
中に入ると、壁一面に設置された巨大ステンドグラス。十字架は、旧来の祭壇設置型ではなく、天井から吊るされて宙に浮いてます。う〜ん、自由、、、
*サン・ベント修道院/Mosteiro de Sao Bento
ポルトガルの植民地時代、サトウキビ輸出で好景気に湧いたブラジルは当時、教会・修道院の建設ラッシュ。それを象徴するのが、この1671年建造のカトリック修道院。
外観は控えめだけど、中に入ると金銀でギラギラ…ギャップが衝撃的です。繰り返しになりますが、ここは修道院。どうしたって、宗教の難しさを感じてしまいますねぇ…。
・・・さて、そんな楽しい見どころいっぱいのリオデジャネイロですが、残念ながら美しいモノばかりじゃありません。ここまで来たからには「ファベーラ/favela」もこの目で確認しておかねば。
ファベーラとはつまり、“スラム”・“貧民街”のこと。激しい貧富の差で知られるブラジルですが、なんとリオデジャネイロだけで900以上ものファベーラがあるのだとか。
興味本位で旅行者がそのエリアに入ったら、殺されたって仕方ない。それくらい危険な場所です。
そのため、「テレフェリコ/Teleferico」というロープウェイに乗って、上空から眺めるのみ。それでもロープウェイに乗り込むときに係員からは、「カメラは閉まっておけ。撃たれるぞ。」と注意が。
そもそもこのロープウェイは、ファベーラ住民が利用するためのもの(そのため乗車は無料)なので、これ見よがしにカメラなんてぶら下げてると、強盗、最悪は殺人に遭ってしまうということ。
そんなわけで細心の注意を払いながら、ろくにファインダーも覗かずに、一瞬でパシャリ。
近年は警察の介入で、少しずつ治安は改善されつつあるとはいうけれど、それと住環境の改善は別の話。上空からひと目見ただけで分かる、劣悪な環境が広がっています。
住環境が改善されないのも当然。そもそもスラムとは一般的に、不法居住の家屋で形成されているわけなので、社会的には取締まりの対象でしかないのです。
そのため写真のとおり、ゴミ収集といった基本的な社会福祉もこの地域には及びません。ただただ、ゴミの山ができていくだけです。
2000年代に入って、急激な経済発展を遂げてきたブラジル。
“都市周辺の人々の手が加わって発達した文化的景観”という、究めて現代的な世界遺産の登録事由。
そして、本質的には放置され続けるファベーラの問題。
資本主義の光と影の最も強いコントラストを、これまで訪れたどの地域よりも、ここリオデジャネイロで感じたように思います。
そんなわけで、「2016リオ五輪」よりも「2016リオ五輪 以後」のリオデジャネイロ、そしてブラジルに、日本人として、俄然注目してしまう私たちなのでした。
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