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「世界一の美食の街」たる所以の、表面的なハナシではなく、根っこのハナシ


前回の「旅の日記」に綴ったとおり、スペインの「美食の街」サン・セバスチャンに到着した私たち。

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「スペインの美食の街」というより、誰が言ったか、今や「世界一の美食の街」と呼ばれるここサン・セバスチャンですが・・・
 

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日本では、高城剛さん著の『人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか ―スペイン サン・セバスチャンの奇跡』 という本で一躍話題になりました。

ん?「高城剛」?……と、著者名に引っ掛かった方も多いと思いますが、そう、ハイパー・メディアクリエーターにして、女優・沢尻エリカさんの元夫の、あの高城剛さんであります。

正直、私たちがあまり好きなタイプではなかったということもあり、忙しい旅立ちの前に、この本に目を通すことはありませんでした(苦笑)
 

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いずれにせよ彼が書籍にする以前から、世界的にはすでにかなりの注目を浴びていた街、サン・セバスチャン。その証拠に、ミシュラン星付きレストランが人口比/面積比で世界で最も多い街…というデータもあります。

しかし、それはあくまでも結果論。なぜ、世界遺産があるわけでもない人口18万人足らずの街に、世界各地から人が押し寄せるような、「美食」産業を形成することができたのか?

それは大きく、以下の3つのポイントが挙げられます。
 

① 料理革命にして、地域革命!

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1970年代にフランスで大流行したのが、「ヌーヴェル・キュイジーヌ」というスタイル。フランス語で「新しい料理」 を意味するこのスタイルは、従来のフランス料理の常識を破り、良い意味での“軽いフランス料理”を展開し、瞬く間に大流行。

この “フランス料理革命” ともいえる出来事に衝撃を受けたバスク出身の若手シェフたちは、「ヌーヴェル・キュイジーヌ」を地元に持ち帰り、今度は自分たちなりの「新しい料理」作りに挑戦していきます。  

で、ここでスゴイのが、サン・セバスチャンの料理人たち。「レシピは門外不出」というフランス料理界の不文律には背を向け、 レシピの共有はもちろん、新しい技法などを皆で研究することで、個人のレストランだけでなく、街のレストラン全体のレベルの底上げを図ったのです。

その努力の賜物として、サン・セバスチャンには、料理分野で学位がとれる大学まで設立されているというのだから、もう驚き……。

彼らにとっては、小さな街が生き残るための「料理革命」はつまり、「地域革命」だったのですね〜。
 

② 謎の黒幕!?「美食倶楽部」の存在

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そして、これだけで終わらない下地があるのが、この街のスゴイところ。それが、サン・セバスチャンに100以上あるという、「美食倶楽部」の存在です。

女人禁制の(だった?)この組織、女性が強い「バスク」の社会の中にあって、男性たちが息抜きがてらキッチンに集まって、自分たちで料理を楽しむという、一種のサークル活動のようなものがその始まりとされています。

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「バスク」とはなんぞや?…は、↓こちらの記事で
【15カ国目】スペインに到着しました!


サン・セバスチャンでは、1800年代頃からこの「美食倶楽部」を中心として、レストランなどのプロの料理人だけに留まらず、街全体で食文化の蓄積がスタートしていたということになります。

でも、単なるサークルでしょ?…と、侮ることなかれ。

その効果は、サン・セバスチャンで起こった「料理革命」のムーブメントが、レストランだけではなく、バルの料理へと広がっていく中で花開きました。

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今でこそバルでは「ピンチョス」スタイルが定着していますが、そもそもピンチョスとは、「串刺し」という意味。そう、かつてのバルでは、串に刺した酒のつまみを提供する程度に過ぎなかったのです。

それが、タパスをはじめとする小皿料理までも「ピンチョス」と呼ぶようになるなど、現在ではそのバリエーションは多種多様

このバルの食文化の成長もあって、近年では「スペインのバル」として世界に知れ渡るようになりましたが、なんとその急先鋒は、サン・セバスチャンのバルだったといわれています。

こうしてサン・セバスチャンは、1990年代に入ると、質の高いレストランとバルが支える「美食の街」として、世界各国から注目を集めるようになりました。
 

③ 本当の地産地消って、なんだっけ?

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サン・セバスチャンは、山あり・川あり・海ありと、自然に恵まれた食材の宝庫

しかし、すばらしい食材が豊富にあるからといって、それだけで「美食の街」足り得るか、もしくは「一次産業」が潤うのかといったら、その答えは日本の地方の現状をみれば、火を見るよりも明らかです。

サン・セバスチャンでは、あくまでも①と②で触れたようなアイデンティティと取り組みがあった上で、それらの食を支える様々な原材料が、基本的に地元で調達されています。

これによって、多くの先進国が頭を悩ませる一次産業の不振の中にあって、サン・セバスチャンでは漁業や農業、酪農などが安定的かつ質の高い生産を続けているのだそうです。
 


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・・・といういうわけで、ツーリズムのコンテンツとして「新しい食」を軸として据え、それに飲食業と一次産業が連動しながら、地元の人々や自然の価値を最大化しているのが、ここサン・セバスチャン。

わずか人口18万人足らずの街が、名実共に「世界一の美食の街」となった所以です。

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日本では地域の “人口が少ない” ことを、「地方消滅」なんていう言葉と共に、圧倒的にネガティブに報道しているけど、果たしてそれは本当か?

ミニマリストを気取るつまりは全くないけれど、少なくとも、「数」の論理でモノゴトを片付ける時代ではないはず。

ぼんやり考えたいたことが、ここサン・セバスチャンの地で、確信に変わったのでした。

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4 thoughts on “サン・セバスチャンが「世界一の美食の街」なのは、ミシュラン星付きレストランがあるからじゃないよ

  1. 初コメントさせていただきます!
    テーマがしっかりしていて、まとまりのあるおしゃれなブログいつも楽しく読ませていただいております。

    サン・セバスチャン美味しい!という自分の記事と比べて
    今回の記事の深さと言ったら、、、

    感服いたしましたw
    これからも楽しみにしております!!!

    • コメントありがとうございます!

      いやいや、今回の日記は、詳しい方から聞かせてもらった話の受け売りですので…恥

      でも、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします!

    • 太田さん!

      たくさんのコメントを頂いていたのに、気付くのが遅くなってしまってごめんなさい…!

      そして、ほんと〜にありがとうございますー!!

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