まずは実際に、現地の人と一緒に郷土菓子を作ることから
ここまで旅の日記と世界の郷土菓子を綴ってきましたが、私たちがこの旅で本当にやりたいことは、物見遊山の観光でもなく、食べ歩きをしながらの食レポでもありません。
旅するパティシエは、単にレシピを集めるだけでなく、実際に現地の人と一緒に郷土菓子を作ることで、その国や地域の歴史・文化・暮らしを立体的にインプットしていくこと。
旅する本屋は、そのインプットが新鮮な内に、あえて現地で編集して、誌面(SWEET TRAVEL BOOK)としてアウトプットしていくこと。
そうすることで、“世界の郷土菓子”というフィルターを通じて体感した、旅と地域の価値を可視化していく。
・・・そんなコンセプトで旅を続けています。
そのため、いかに「現地の人と一緒にお菓子を作らせてもらうチャンスを得るか」が、なによりも重要な、はじめの一歩になります。
そしてあくまでも、“郷土” 菓子にこだわっているので、もちろん旅行ガイドブックに載っているような、観光客向けのお店に事前アポイントを取ったりはしません。
基本的には街を歩きながら、パティスリーや個人家庭に「一緒に郷土菓子を作らせて下さい!」と、ひたすらお願いをして周る予定です。
…というわけで、今日はそんな私たちの、第一弾 ”アポなし突撃取材” in クスコでの様子をお伝えします。
私たちの作戦は・・・
①質問をスペイン語でまとめる
ここペルーはスペイン語圏のため、めったに英語は通じません。そのため、「このお菓子の名前は?」という基本的なことから、「一緒に郷土菓子を作らせてもらえますか?」というお願いまで、想定し得るあらゆる質問を書き出し、スペイン語に訳してメモ帳にまとめました。
②ターゲットのお菓子を決める
街を散策しながら、そしてパティスリーを巡りながら、地元の人に親しまれているであろう郷土菓子に目星をつけます。今回は、世界の郷土菓子にも記したとおり、「Alfajores/アルファフォーレス」をターゲットに。
③地元人気が高い&厨房有りのパティスリー探し
Airbnbなどを利用して個人家庭にお邪魔することも考えましたが、妻の「まずはプロに習いたい!」という希望で、今回はひたすらパティスリーへアタック。お店選びのポイントは、地元の人の出入りが多いことと、きちんとした併設の厨房があること。
④実食してみる!
手抜き商品じゃないよね!?…という視点で、旅するパティシエが目を光らせながら、とにかくまずは一度食べてみます。
⑤スタッフさんに質問してみる
④がOKだったら、①でまとめたメモ帳ですかさずスタッフさんに質問を投げかけ。自己紹介からはじまり、とにかく「郷土菓子を一緒に作らせて下さい!」のお願いに対して、OKをもらうことが目標。
⑥取材開始!
⑤で了解を得たら、調理実習をしながら、いよいよ本取材へ!
①〜⑤まではもちろん自分たち次第なので、気合いと根性さえあればいくらでも進めることができます。ですが、問題はやはり⑥。
「日本からやって来た、パティシエです。」
「あなたの国の郷土菓子やこのお店を、日本人に紹介したいです。」
…というメッセージまでは、とってもにこやかに話しを聞いてくれるのですが・・・
「一緒に郷土菓子を作らせてもらえますか?」
…という質問をした途端、顔が曇る!
そして、NGが出る…!!
NGの理由を聞いてみると、今回のターゲットである郷土菓子「Alfajores/アルファフォーレス」は、お店では作っておらず、外から仕入れているのだとか、、、
しかし、もちろん一軒のNGだけでヘコたれるわけにはいきません。
クスコ市内中をひたすら歩きながら・・・
アタック!
アタック!
アタック!
アタック!
アタック!
…と、計10軒ほど続く。
・・・しかし、なんと全滅…!
理由は、訪ねたパティスリーはすべて、店内では「Alfajores/アルファフォーレス」を作っておらず、外から仕入れていて、しかもその仕入れ先は遠いトコロにあるので、旅行者が行くのは難しいだろう…という回答。
ここまでくると、どうやらクスコにあるパティスリーは、どこも同じトコロから仕入れているのではないか、という疑惑。確かにおいしいのだけど、あまりお店によって変化はないのも確かだし、、、
…と、なんとなく裏事情まで見えてきたような気がして、加えて、だいぶ日も暮れてきたので、ラスト一軒のアタックで留めることに。
そして、今度はパティスリーではなく、あえてカフェへの取材をトライ。
…すると、
…なんと、ついにOKが!!!
こちらのカフェでは「Alfajores/アルファフォーレス」は自家製なので、明日のAM7:00に来れば一緒に作らせてもらえるとのこと!
ついにやりましたーーー!
…というわけで夜は、夫婦で翌日の取材のための打合せ。ここ数日歩き通しでだいぶキツかったけど、翌日はAM6:00に起床。
旅するパティシエはもちろん、コックコート姿に変身なのです。
そして、そそくさと取材先へと向かいました。
カフェに到着すると、開店前で静かな店内。
厨房もまだ薄暗く、少しずつ動き出した程度のご様子。
昨日、取材OKを出してくれたスタッフさんはどうやら出勤していないようだったので、他の方に改めて、自己紹介と昨日の流れを説明しました。
…すると、
「部外者をキッチンに入れることはできないわ。」
「・・・え!?」
意外な回答に、一瞬固まってしまった私たち。
いやいや、昨日確かにお宅のスタッフさんに許可もらいましたよ!…と再度、必死に説明し直すも、ダメなものはダメ!と、それはそれは圧倒的に毅然とした態度。
その後もしばらくゴネてみるものの、議論は平行線…。もちろんこちらの身勝手なお願いではあるので、最終的には仕方なく引き下がることに。
ただただ、しょんぼりと宿に帰る私たち。
雨季だというのにここ数日、日中はずっと晴れていたクスコには、しとしとと雨が…。まるで「“郷土菓子を巡る旅”とかいってるけど、そう甘いもんじゃないぜ〜」と、たしなめられているような、、、
…なんて、おセンチになってる場合じゃありません!
インターネットだけでは知り得ない、ありがちな妄想記事に逃げない、徹底的な現場主義にこだわりたくて、旅に出ることを決めたのは、自分たち。うまく行かないことが当たり前なんて、百も承知!
というわけで、今回の貴重な失敗を大いなる反省として、次へと繋げることを誓う、二人なのでありました。
現地で郷土菓子を作らせてもらう際の反省点
●「パティスリー」への取材にこだわり過ぎない
●観光地の場合、お店が多い分、商品を外注している場合が多いことを認識しておく
●翌日以降の取材となった場合、お店側にメモを残しておく
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*世界一周の旅を経て、
お菓子ブランドをスタート!
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パティシエも本屋も めげずにススメー!
最後のお店、6時に起きたのに!!って2人の代わりに日本語で叫んどいたよ。店内の情報共有のされてなさっぷりも外国ならではだね。
うまくいったverの記事も楽しみにしてます。
こずえさん
地球の裏側から、日本語で叫んでくれてありがとう♪
彼らは、日本のホウレンソウのシステムを知ったら、どんな顔をするのかな〜
もはや、どの店にもメモ書きできるような紙切れひとつ無かったこと、
後から気がついたさ〜
成功ver、しっかり頑張ります!!