プロヴァンスのパティスリーは、シロップに包まれた果物の美術館!?
温暖な気候のプロヴァンス地方は、なんといってもフルーツの宝庫! そのため、名産のオレンジをはじめとする、旬の時期に収穫した果物を加工・保存する技も脈々と受け継がれてきました。
そして、その技術の真骨頂ともいえる郷土菓子がこちらの「Fruits confits/フリュイ・コンフィ」。そう、“フルーツの砂糖漬け” であります。
南仏の街を歩いていると、フリュイ・コンフィをあちこちで見かけますが、驚くべきはその種類の豊富さ。オレンジ・アプリコット・キウイ・パイン・メロン・チェリーなどなど……挙げれば切りがないほどの果物が、砂糖漬けされ、まるで美術品のように店先に並べられています。
さらに注目すべきは、その多くが元のカタチをしっかりと留めているということ。ひと口に砂糖漬けといっても、かなり高度な技術がなければ、これだけのものを作ることはできないはずです。
また、実際に味わってみて(今回はアプリコットをトライ♪)、またもや驚かされたのが、ほどよい酸味を保ちながら、とっても瑞々しい仕上がりだということ!
これまで口にしたことのあるフルーツの砂糖漬けは、香りがなく、妙に甘さだけが際立っていて、正直あまり好きではなかったのですが(苦笑)、まさかこんなにおいしいものだったなんて!…と、それまでの印象が一瞬で覆されました。
美しい果物のカタチを保ちながら、素材の持つおいしさをそのまま閉じ込めた「フリュイ・コンフィ」。
温度調整をしながら、何度も砂糖液に漬けては乾燥させる…という手順を繰り返して仕上げていくそうですが、このときにシロップの糖度を少しづつ上げながら作ることが、果物の味をしっかり残しつつ、カタチをキープするポイントなのだそうです。
ちなみにこのフリュイ・コンフィ、なんと保存料不使用で約1年は保存することができるのだとか。プロヴァンスのクリスマスでは、「最後の晩餐」にちなんで13種類のスイーツを食べる習わしがあり、そのときに、保存のきくフリュイ・コンフィが大活躍するというわけです!
それでは最後に、フリュイ・コンフィの歴史のおさらいを簡単に・・・
紀元前2000年頃、ギリシャやエジプト、中国などでは、“フルーツのハチミツ漬け” が食されていましたが、砂糖が世界各地で普及し始めるのと並行して、“フルーツの砂糖漬け” が人気を博すようになったのだとか。
そして中世に入ってからは、プロヴァンスで盛んに作られるように。……というのも、乳製品の生産が少ないプロヴァンス地方では、クリームやバターを使ったパティスリーよりも、特産のフルーツを生かしたお菓子作りの技術が発達していました。
そんな下地があったため、いつしか “フルーツの砂糖漬け” はプロヴァンスを代表する郷土菓子となっていったのだそうです。
ちなみにこの頃のフランスでは、フリュイ・コンフィのような砂糖を贅沢に使うお菓子を出すことは、富と権力の象徴として、晩餐会などでとても重宝されていました。
日頃フルーツを使ったお菓子作りをする上で、果物を美味しく加工することの難しさを常々感じていた私にとっては、とても実践的な学びとなった、今回のフリュイ・コンフィとの出会い。
再びプロヴァンスを訪ねるときにはぜひ、“美味しさを閉じ込める技術” を習得する、フルーツを巡る旅がしたいと、また一つ新たな目標ができたのでした♪
あや
【今回「Fruits confits/フリュイ・コンフィ」を購入したお店はコチラ】
パティスリー・ルブラン/Patisserie LEBLANC
住所:37 rue du 4 Septembre, 13200, Arles, France
HP:https://www.facebook.com/masakiyamamotoarles/
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*世界一周の旅を経て、
お菓子ブランドをスタート!
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文ちゃんの次のプロバンスを旅の目標が出来てよかったですね。
おかげさまで、もう一度南仏に来る言い訳ができました(笑
次回はぜひ、マルセイユの方まで足を伸ばせればと思ってます♪