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ユダヤ教・イスラム教・キリスト教の聖地で、「区別」について考えた


前回の「旅の日記」では、ユダヤ教徒・ムスリム・キリスト教徒・アルメニア人と、4つの地区に分かれている世界遺産・エルサレム旧市街について綴りましたが・・・

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・・・今回はついに、ユダヤ教・イスラム教・キリスト教……世界三大一神教の聖地とされる由縁に迫っていきたいと思います!

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まず向かったのは、ユダヤ教徒の聖地「嘆きの壁/Wailing Wall」

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こんなカンジの様子で、誰もが比較的自由に歩くことのできるエルサレム旧市街ですが・・・

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・・・「嘆きの壁」の周辺に辿り着くと、このようにセキュリティポイントが設置されていて、イスラエル兵による手荷物検査が行われます。ちなみに入場は無料。

そしてこのポイントを無事通過すると、どど~ん!…っと目の前に突如、巨大な壁が!

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そう、これが「嘆きの壁」であります!!!

なお、壁に近付く = 祈りの場所に近付くためには、男性は必ず頭を隠さなければなりません。

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そのためユダヤ教徒は皆、日常的に「キッパ」という小さな帽子を頭に乗せているわけですが・・・

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・・・「嘆きの壁」では観光客用に、ナイロン製の簡易キッパが貸し出されています。

さらに、これは観光客には課せられていませんが、ユダヤ教の朝の祈りの道具として、「テフェリン」というものも。

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革製の紐を左腕にぐるぐる巻きして、額には同じく革製の箱をのせる、2つで一セットのテフェリン。箱の中には、ユダヤ人が忘れてはならない、大切な4つの祈りが書かれた紙が入っているそうです。

そして、いざ準備が整ったら、壁に向かっておもむろに・・・

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・・・祈る!!


……って、そもそもなんで壁に向かって祈るのかというと、

エルサレム旧市街の東端にある「神殿の丘(ハラム・シェリーフ)」には、かつてユダヤ教の神殿がありましたが、70年にローマ軍によって破壊され、現在はイスラム教の聖地「岩のドーム」が立っています。

「神殿の丘」はムスリムの管理下にあるため、ユダヤ人は立ち入ることができず、ただ、東ローマ帝国による破壊を免れた、神殿を囲む外壁の一部だけは、ユダヤ教徒の管理とされました。

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つまり、壁に祈っているのではなく、壁の向こう側の今は亡き神殿の荒廃を嘆き、聖地の回復を願うことが、ユダヤ教徒にとっての祈りなのであります。

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ちなみにこの壁は神殿の西側に位置することから、ユダヤ人の間では「西の壁/The Western Wall」と呼ばれています。

ではなぜ「嘆きの壁」という名が広まったかというと、 壁に向かってユダヤ教徒が祈る様子を見たヨーロッパからの旅行者が、「ユダヤ人が嘆く場所」と呼んだことに由来しているからなのだとか。

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聖書を読み上げる人、すすり泣く人、壁にカラダ全体を預けて動かない人……祈り方はそれぞれですが、皆総じてその表情は固く、険しく、なるほど確かにここは、“嘆き”の壁なのだということを実感。

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壁を近くでよ~く見てみると、そこには無数の折り畳んだ紙が。ユダヤ教徒たちが願い事を書いて、壁の隙き間に挟んでいくのだそうです。

願い事と言っても、家内安全とか無病息災とか、我々日本人が絵馬に書くような願い事とは、全く違う内容なんだろうなぁ…。

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ちなみに、「嘆きの壁」を引きで見るとこのようになっていて、奥にあるアーチをくぐって行くと・・・

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・・・このように、やはり祈りの場所が広がっています。

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印象としては、アーチの中の方が、いわゆる「正当派ユダヤ人」と呼ばれる人が多いような。

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壁に向かって神と対話をしたり、座ってゆっくり聖書を読み耽っていたりと、やはりここでも思い思いの祈りの時間を過ごしていました。

ただ、何を言われるわけではないのだけど、外国人としては正直かなり居辛い雰囲気。それくらい、今まで味わったことのない、独特な世界観をビシビシと肌で感じます。

さらに・・・

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・・・男性と女性で祈りの場所が分けられていたり、

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・・・「ウエスタン・ウォール・トンネル」という、嘆きの壁の底部を掘り起こした地下トンネルを歩けたりと、

色んな意味で、簡単にまとめることのできない「嘆きの壁」…。なので嘆きの壁については、また改めて、別個に日記に綴りたいと思います!


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そして次に向かったのは、ムスリムの聖地「岩のドーム/Dome of the Rock」

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前述のとおり、「嘆きの壁」に囲まれた丘が「神殿の丘」。まずは、そこを目指してスロープを歩いていくと・・・

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・・・「岩のドーム」が待ち構えています!

ユダヤ教の神殿跡でもあるこの場所に、旅行者の私たちは簡単に入れるというのに、ユダヤ教徒は立ち入ることのできないというのだから、エルサレムの難しさをつくづく感じます、、、

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預言者・ムハンマドが天使を従え、天馬に乗って昇天したとされる聖岩を覆うように立つ、この「岩のドーム」。

聖岩にはムハンマドの足跡が残っているそうですが、残念ながらここは観光客も入ることはできず、ムスリムのみ中に入って確認することできます。

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ちなみに、「岩のドーム」の向かい側に立つこの建物が、「アル・アクサー寺院/Al-Aqsa Mosque」。狂信的なキリスト教徒による放火やヨルダン国王の暗殺など、数々の事件が起こった現場でもあります、、、

そして、そんな聖なる丘の上で、ムスリムたちはやっぱり・・・

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・・・祈る!!


多くの人が椅子に座って、コーラン(クルアーン)を読み耽っていました。時には雑談も交えつつ、居眠りしてる人なんかもいて、良い意味でユルめの空気が流れています。

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ただ、私たちは普通に並んで歩いてるだけでも、警備の人に「離れろ!」とものすごい勢いで注意を受けたので、男女で一緒に行く人がいたらご注意を。

少なくとも1mくらいは、男女は距離を保って歩くことをオススメします。

注意事項でいうと、服装についても。観光客には最低限、腕や足を露出しない服装が求められます。

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この看板を見る限り、ムスリムの服装の乱れが問題になっているようで……このあたりは、どこの国でも同じみたい(笑


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そして最後に向かったのは、キリスト教徒の聖地「聖墳墓教会/Church of the Holy Sepulchre」

イエス・キリストが十字架にかけられ、磔刑に処されたのが「ゴルゴタの丘」とされていますが、その丘とされる場所に建てられたのが、聖墳墓教会です。

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せっかくここまで来たからには私たちも、イエスが十字架を背負って歩いたとされる道「ヴィア・ドロローサ/Via Dolorosa」を歩いて、ゴルゴタの丘を目指すことに。

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ヴィア・ドロローサには、イエスと同じように十字架を背負って、賛美歌を合唱しながら歩く巡礼者たちの姿が。

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彼らは、ヴィア・ドロローサでイエスの身に起こった「裁かれた」「鞭で打たれた」「つまづいた」…など計14ある中継点(留)でその都度足を止め、祈祷文を読み上げながら、ゴルゴタの丘を目指します。

そして、約1kmの道のりを行くと・・・

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・・・「聖墳墓教会」が現れます!

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中に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、畳ほどの大きさの石。

これは赤い大理石板で、十字架から降ろされたイエスの聖骸に、香油を塗った場所とされています。

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こちらが、その場面が描かれたモザイク画。

イエスが横たわっていたとされるこの石に、直接触れながら人々は・・・

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・・・祈る!!


イエスの苦しみを慮って泣き崩れる巡礼者も多く、「イエスが私たちの罪を背負った」…というキリスト教ならではの信仰とその祈りを、目の当たりにしました。

教会内にはほかにも・・・

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イエスの十字架が立てられたとされる場所や・・・

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そしてなんと、「イエスの墓」までもがあるのです…!

このお堂に、屈まないと入ることのできない小さな入口があって、中に進んでいくと、イエスの遺体が安置されていたとされる、石墓が置かれています。

内部は3~4人しか入れなほどの広さで、薄暗く、私たちが入ったときには信者の方々が皆、石墓に突っ伏して号泣。

キリスト教徒ではないのだけれど、自分たちが、あのイエス・キリストの最後の場所にいると思うと、やはり胸に期するものがあるのでした。


キリスト教の巡礼地はほかにも・・・

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あの「最後の晩餐」が開かれたとされる部屋があったり・・・

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と思いきや、そのすぐ下の部屋には、古代イスラエルの王・ダビデの墓があり、ユダヤ教徒の祈りの場となっていたり・・・

・・・「嘆きの壁」と同様に、ちょっと今回だけではまとめ切れないので、また改めて、別個に日記に綴りたいと思います、、、


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ユダヤ教・イスラム教・キリスト教、それぞれの聖地を回ってみた感じたのは、「差別」は当然あってはならないことだけど、「区別」がいかに重要かということ。

「グローバリズム」が是として声高に叫ばれる世の中だけど、それって本当に手放しで称賛されるべきものなのだろうか?

わずか1㎢の区画ですら、信じるもの、守るべきものが異なる者同士の共存共栄を、2000年以上かけても実現できていないというのに?

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現在のエルサレム旧市街が、観光客が歩けるほどの治安をなんとか保てているのは、宗教ごとに区画の管轄を明確にして、なおかつ、武力による抑止力を効かせているからこそでした。

パレスチナ問題というまた別のレイヤーの課題もあるので、今の状態が最良とは思わないけれど、少なくとも「区別」しなければ、エルサレム旧市街は未だに、武力衝突の最前線だったはず。

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宗教の問題を、いわゆる国際社会の目指す「グローバリズム」に安易に当てはまるのはちょっと違うのかもしれません。

でも、絶対に避けては通れない、ある意味、人間の根幹に通じる問題であることには変わりないわけで、そういう意味ではやっぱり「エルサレムは、世界の縮図」なんだなと、しみじみ。

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一応断っておくと、民族主義者でも、ナショナリストでも、トランプ大統領好きでもありません(笑)

ただ、「区別」することは、他者の生き方を尊重することでもある。その事実は、常に頭の片隅に入れておきたいと強く思うようになった、世界三大一神教の聖地を巡る旅なのでした。

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*世界一周の旅を経て、
お菓子ブランドをスタート!




8 thoughts on “[世界遺産]エルサレム旧市街… 世界三大一神教の聖地で、グローバリズムが怖くなった話

  1. 遅くなりましたが、こちらのブログを読ませて頂きました。試験勉強では知ることができない、世界遺産に登録されている資産が持つ本当の姿を垣間見ることができ、とても興味深かったです。

    これからのブログも楽しみにしています。

     

     

    • Hiroさん

      恐縮です…!デリケートな話題なので悩む部分も多かったのですが、稚拙な表現ながら、自分たちが現地で感じたことも素直に綴ってみました。

      エルサレムは、これまで旅してきた中でも最も興味深い街の一つだったのですが、治安面を考慮すると、声を大にしておすすめできないことが、本当に残念です、、、

      なかなか暑苦しいブログではありますが(笑)、これからもよろしくお願いします!

    • 太田さん

      こちらこそ、いつもありがとうございます!色々なことを考えさせられた、エルサレムの旅でした。

  2. こんにちは。フリーランスで書籍編集をしている者です。世界中のさまざまなお菓子を介して、各国、各文化のことが見えてくる・・・そんな企画を考えながらネットをあれこれ見ていたところ、こちらのサイトにたどりつきました。以来ちょこちょこ拝読していて、今回のエルサレムのお話もとても興味深く読ませていただきました。これからも更新を楽しみにしております。

    • ami さん

      はじめまして。うれしいコメントありがとうございます!そして、私たちと同じ視点で企画を練っている方がいると思うと、とってもうれしくなりました。ご縁あれば、世界の郷土菓子を通じて、なにか一緒にできるといいですよね!

      マイペースな更新ではありますが、これからもよろしくお願いします♪

       

      • ご返信ありがとうございます。こちらこそ、このエッセイブログを見つけた時は、おおっ!と画面に食い入りました。ご縁を楽しみにしています。ちなみに昨日はクナーファにテンションが上がりました。昨年末にUAEではじめて食べ、大大大好きになったデザートです。今後も楽しみにしています。道中、美味しく楽しく、どうぞお気をつけて。

        • amiさん

          クナーファはUAEにもあるのですね…!そして、すでにご存知だったなんて、すごい!なにか一緒にできることがないかなぁと、早速妄想してしまいました(笑

          本当にありがとうございました。気が向いたときは、ぜひまたコメント下さいね♪

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